コールセンターを支えるPBX(構内交換機)の歴史を紐解く。アナログからデジタル、そしてクラウドへ

PBXの起源、オペレーターによる交換から自動化へ

「電話の発明者はグラハム・ベル」と思っている人が多いのではないでしょうか? ところが歴史は書き換えられました。2002年にアメリカ合衆国議会は、イタリアのアントニオ・メウッチが電話の発明者であることを公式に認めました。したがって、現在、電話の公式な発明者はアントニオ・メウッチです。

彼は1854年頃に電話を完成して特許を取得していましたが、資金難のため特許の更新ができなかったそうです。1876年に、その期限切れの特許を取得したのがグラハム・ベルです。わずか2時間の差でイライシャ・グレイが出願して苦渋をなめました。さらにエジソンも交えて、特許をめぐった激しい争いが繰り広げられたことが知られています。

電話の黎明期、相手と話をするためには、電話局のオペレーターが手動で配線をつなぎかえる必要がありました。このために配置されたのが電話交換手です。1952年の古い写真には、大勢の電話交換のオペレーターが並んでいます。まるでコールセンターの様相です。

1952年のアメリカでの電話交換の様子

Telephone operators, Seattle, Washington, U.S., 1952. According to a City archivist these were probably Seattle City Light employees.

電話の利用者が拡大するにしたがって、電話の交換は自動化されます。まず「ステップバイステップ交換機」と呼ばれるダイヤルパルスによる制御から始まりました。次に「クロスバー交換機」というリレースイッチによるものなどが登場します。

電話交換機は、企業規模の拡大とともに通信事業者だけでなく企業内においても必要になりました。外線電話を社内の各電話機に振り分け、内線電話を自動的につなぐために登場したのが「構内交換機」です。構内交換機は「Private Branch eXchange」という英語から、略称として「PBX」と呼ばれるようになりました

アナログからデジタルへ、そしてクラウドへ

電話交換器・PBXの変遷日本で初めて電話サービスが開始されたのは1890年。当時の契約数は東京で237、横浜で45でした。その後、経済の成長とともに1913年には20万もの契約数に膨れ上がります。第二次世界大戦で打撃を受けますが、戦後、復旧していきました。

日本でもPBXは、オペレーターによる人力の交換から、アナログPBXに推移。1980年代頃からデジタルPBXの時代になり、ISDNによるデジタル回線の整備とともに進展していきます。

アナログPBXで行われていたスイッチによる交換は、まず内線電話の交換からデジタル化され、1990年代には外線電話の交換も実現しました。電話回線はコンピュータと統合され、CTI(Computer Telephony Integration)が登場します。

CTIによって、コールセンターは大きく変わります。通話はコンピュータ経由で行われ、オペレーターはヘッドセットで対応するようになりました。また、通話の履歴をデータとして記録し、お客様の履歴を確認しながら対話できるようになりました。

2000年代には、インターネットの利用拡大、企業内に設置されたパソコンやサーバーのLANによるネットワーク化が進みました。インターネットプロトコル(IP)を使って通話できるIP電話、インターネット回線に電話回線を収容した交換機「IP-PBX」が登場します。

IP-PBXはハードウェア型とソフトウェア型があります。ハードウェア型IP-PBXの場合、導入コストは高くなりますが、セキュリティや安定した稼働の面で信頼性があります。一方、ソフトウェアIP-PBXは導入や運用面のコストが低減できることに加えて、物理的な制限がないため拡張性に優れます。

さらに2010年代に登場したのが、クラウドPBXです。グループウェアなどあらゆるサービスがオンプレミスからクラウドに移行していますが、PBXもまたクラウド上で実現する製品が主流になりつつあります。

ざっと駆け抜けて解説しましたが、PBXはこのように変遷してきました。

PBXをテクニカルタームから理解する

コールセンターを例として、PBXのテクニカルタームを解説していきましょう。

お客様がコールセンターに電話したとき、まず「商品に関する問い合わせは1を、修理に関する問い合わせは2を……」のように自動音声で案内して、プッシュボタンを押していただきます。この機能がIVR(Interactive Voice Response System)です。その後、電話を自動的に空いているオペレーターの回線に振り分ける機能は、ACD (Automatic Call Distributor)と呼ばれています。

コールセンターでは、VoIP (Voice over Internet Protocol)によって、音声データをIPネットワーク経由で送受信しています。多くの場合、SIP(Session Initiation Protocol)で制御されています。通信事業者はIP centrexというアウトソーシングで、IP電話の保守や運用を請け負っています。IP-PBXのソフトウェアでは、アメリカのディジウム社が開発しているオープンソースのAsteriskが有名です。

コールセンターはもちろん一般のオフィスでも、電話、メール、メッセンジャー、チャットなどさまざまなコミュニケーションが使われます。これらを統合するコンセプトがUC(Unified Communications)です。ボイスメール、FAX、ビデオ映像などを通常のメールと同じように扱えるようにします。

クラウドPBXを導入するメリットは?

クラウドPBXが、現在注目を集めています。この流れを先取りしたのは、大手通信事業社でした。大手通信事業者では、電話回線はもちろん、携帯電話、インターネット回線、SaaSなどのクラウドサービスを展開しています。そこで、サービスを統合して企業全体のコミュニケーションを統合するソリューション展開を始めました。

クラウドPBXを導入するメリットは、第一にIP-PBXと比べて、オンプレミスの物理的な負荷から解放され、管理コストを削減できることです。第二にスケーラビリティ。利用者の増減に合わせて、柔軟に拡張や縮小ができます。第三に内線電話にスマートフォンやタブレットの端末を利用して、通信コストの削減やモートワークも実現します。

PBXは進化しています。企業やコールセンター/コンタクトセンターの通信によるコミュニケーションは、今後大きく変わっていくことが予測されます。

モビルス株式会社について

チャットボットによる自動応答を可能にする、コール/コンタクトセンター・顧客サポート向けチャットシステム「モビエージェント」を開発しています。

ボットによる「自動対応モード」とオペレータによる「有人対応モード」の切り替えも簡単。チャットボットに一次受け対応を任せることで、オペレータによる丁寧な二次対応も可能になるチャットツールです。

また、チャットボットは、顧客からの一時的なコール集中やオペレータの急な離席にも対応可能。「モビエージェント」の採用により、顧客満足度の向上、オペレータストレスの低減、放棄呼の削減や応対効率の改善が実現できます。

チャットシステムの導入検討や活用事例等についてご質問やご相談がありましたら、モビルスまでお気軽にお問い合わせください。

また、多国籍チームで新しいチャットシステムを開発するエンジニアの仲間も募集しておりますので、お気軽にご連絡の上、一度オフィスにも遊びに来てください。

著者プロフィール

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石井智宏
モビルス株式会社 代表取締役

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