働き方改革で導入が進む「在宅勤務」、コンタクトセンターや顧客サポートでの導入および運用のポイントとは

働き方改革で進展する在宅勤務

労働人口の減少、長時間労働の是正を背景に「働き方改革」が進められています。在宅勤務(テレワーク)を検討、導入する企業も増えてきました。

例えば富士通では、仮想デスクトップ(VDI)、シンクライアント端末のノートPC、業務に必要なグローバルコミュニケーション基盤を整備し、ICTによる在宅勤務の導入が話題になりました。運用ルールの徹底や社員教育を行うなど、ICT以外の部分にも注力しています。

在宅勤務で懸念される問題の一つがセキュリティです。個人情報管理の徹底が求められる中、それを支えるテクノロジーも充実してきました。

富士通でも採用されているシンクライアント端末もそのひとつです。業務に必要な処理はすべてサーバー側で行わせ、在宅ワーカーの手元のコンピュータ側では、画面の表示など最小限の機能を持つ端末を利用するしくみです。

このように働き方改革やテクノロジーの進化が進む中では、コンタクトセンター業界においても、人材不足を補う手段として在宅勤務は有望ではないでしょうか。

しかし、実際にはテレワーク導入を予定、検討している企業は多くありません。導入の障壁になっているものは何か、サポート業務におけるテレワーカー導入のメリット、課題やノウハウを考察していきましょう。

在宅勤務がコンタクトセンターで導入されにくい理由

まず、コンタクトセンターに限らず、テレワーク全体の動向を国土交通省の「平成27年度テレワーク人口実態調査」の結果からピックアップします。

週1日以上、在宅で終日就業する雇用型テレワーカーは全労働者数のうち2.7%を占めます。すでに週に何日かで終日在宅勤務を実施している人は、在宅勤務をさらに増やしたい意向があるようです。

特に「何らかのセキュリティ対策あり(n=478)」で勤務している場合には、在宅勤務の意向が高まる傾向にあります。企業側は社員の管理を心配しますが、社員側でも安心して在宅ワークに取り組める環境を望んでいると言えるでしょう。

在宅勤務のメリットとしては、在宅勤務者の64.3%が「通勤や移動の肉体的・精神的負担を減らせる」を回答、トップに挙げています。

通勤ラッシュのストレスを軽減するとともに、仕事の時間を自由に設定できることも高く評価しているようです。何より、都心では平均片道1時間ともされる通勤時間がなくなれば、1日2時間、週5日なら10時間を自由に使えることになります。

一方、サポート業界に目を向けると、一般社団法人日本コールセンター協会の「2016年 テレマーケティング・アウトソーシング企業 実態調査」では、在宅テレコミュニケーター導入「予定なし」の企業が55社中45社(81.8%)を占めました。在宅勤務導入に積極的ではありません。

在宅勤務を導入する最も大きな障壁は、セキュリティです。38社(69.1%)が、セキュリティ上の問題を理由として挙げています。続いて、労務や品質の管理を問題視しているようです。管理の煩雑さとサポート品質の低下を懸念しているのです。

終日在宅勤務の増加意向/コンタクトセンターにおける在宅勤務導入の動向

しかしながら、コンタクトセンター業界の人材不足と離職率の高さは深刻な問題です。その改善のカギを握っている施策のひとつが在宅勤務ではないでしょうか。

在宅勤務の導入により、時間によるシフト制を行い、深夜や早朝など電話サポート時間外に対応時間を拡張できます。繁忙期や閑散期に合わせて人員を増減して、業務のスケーラビリティを柔軟にすることも可能です。

機器やフロアなど、物理的な初期コストの軽減も可能ですから、仮に在宅ワーカー向け端末の提供等を差し引いてもおつりが来る計算です。

サポート業務における在宅勤務導入のノウハウ

コンタクトセンターで在宅勤務を導入するにあたっては、セキュリティ対策を万全にすることは必須条件です。シンクライアントなどの端末、VPN接続、暗号化など通信環境のインフラの整備も検討する必要があります。

さらに、テレワーカーの教育、人事評価や勤怠管理を定めることも重要です。技術的対策や物理的対策だけでは不十分であり、人的対策をしっかり行わなければなりません。

特に顧客サポートを扱うコンタクトセンターでは、テレワーカーの役割やアクセス権限を的確に定める必要があります。

導入にあたっては、オペレーターの中でも経験を積み、特に信頼できるベテランのオペレーターから在宅ワーカーの希望を募ってもよさそうです。実際、長期勤務のベテランオペレーターの中から評価の高い希望者をテレワーカーに認定しているセンターもあります。

サポート業務における在宅勤務導入のノウハウ

性善説の立場が理想とはいえ「目を離すと何をするか分からない」ことは人間の自然な心理です。評価されていないと感じたときにも同様の感情が生まれます。

育児や家事と仕事を同時にこなすオペレーターは、在宅とはいえ時間の確保に必死かもしれません。ワーカーの気持ちを理解し、ねぎらう必要があります。

したがって、在宅勤務者の放置は禁物です。できればテレビ会議などのシステムで顔の見えるコミュニケーションを密に行う必要があるでしょう。

総務省のテレワーク事例によると、株式会社アダムスコミュニケーションでは、バーチャルオフィスツールを使って音声や映像で連絡をしたり、リアルタイムで資料を共有したり、工夫をしています。

チームワークとチャットサポートが在宅勤務導入のカギ

在宅ワーカーの目線に立つと、在宅勤務は自由度が高い反面、「孤独感」に陥りやすいとも言われています。

不正防止だけでなく、テレワーカー同士の横のつながりを強化し、情報とノウハウを共有して「離れていても通じ合える」バーチャルなチームを作ることが成功のコツです。

モビルスが開発する、自動応答対応のコンタクトセンター/顧客サポートシステムのモビエージェントでは、社内チャット用のモビワークと連携させることで、社員間の情報共有と顧客応対の両立が可能になります。このようなグループウェアなどのツールを活用するのもひとつの方法です。

在宅オペレーターは、電話によるサポートよりメールもしくはチャットサポートの方が向いています。電話では、自宅の環境によって周囲の音を気にする必要があります。チャットはその点、テキストのやりとりですから安心です。

とはいえ、電話とチャットのオペレーターの適正は異なります。リアルタイムの迅速な対応はもちろん、あまり堅苦しい表現でも、問い合わせたお客様は機械と対話しているように感じます。電話もチャットもできるマルチオペレーターを望まず、採用や研修の際に電話とチャットの適正を判断して、役割分担をしてもよいでしょう。

定型的な質問であれば、チャットボットを在宅勤務の代替として取り入れることも考えられます。人工知能はオペレーターの仕事を奪うものではなく、人工知能に任せられることは任せてしまうべきです。そして今後は、人工知能には難しい人間ならではのサポート領域を模索していく必要があります。

著者プロフィール

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石井智宏
モビルス株式会社 代表取締役

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